産業用超距離HN1000TR 開発の背景

近年増々あらゆる場所での活躍の期待が高まる産業用ロボットやドローンは無人移動体であり、各種の無線機器を搭載しています。

その中でも無人機に搭載したカメラの映像を基地局へ伝送するための映像無線機は広い周波数帯域を必要とするため、技術課題も多く、また我が国の電波行政での制限もあることから自由に使用することが困難でした。

政府は無人機による長距離物品配達の早期実現に向けて力を入れていますが、無線機器も課題の一つです。無人機ユーザーを含む産学官合同の検討調査会を経て2016年8月に電波法が改正され、無人移動体画像伝送システムとして、無人ロボットのために新しい無線周波数が割り当てられました。

本ビデオ無線伝送システムはその中でも映像を伝送するための5.7GHz帯(5650-5750MHz)で運用を可能とするシステムです。5.7Hz帯ではDSRC(注3)も運用しているため、送信機に要求される電波の質は特に厳しいものがありますが、HN1000T送信機はこれをクリアしました。

かつて無人機に使用されていた1.2GHz帯では1波のみの運用でしたから、災害現場等での同時複数運用ができませんでしたがHN1000TRシステムでは、送信機にナローバンド回路と受信機の狭帯域フィルタの採用により、同場所での5機同時運用を可能としました。

2.4GHz帯のWi-Fiバンドを使用したビデオ伝送無線機では混信を避けることが難しく、混信状態では十分な性能を発揮することが困難でしたが、HN1000TRは管理された5.7GHzバンドの運用(注4)により混信で悩まされることのない快適な運用が可能です。
送信側に高利得の無指向性アンテナを採用し、10㎞の長距離映像伝送を実現します(注5)。


※ HN1000T送信機は総務省の携帯局無線局免許開設が必要です。

注1:最終出力の回路に2個並列の高出力MMICを使用しています。
注2:低レベル領域の周波数の広がりを制限して隣CHへの妨害を抑えました。
注3:Direct short range Communications 有料道路のETCなどに使われています。
注4:JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)により混信が発生しないように管理されます。
注5:障害物のない見通し距離での運用です。受信側に11dBiのパッチアレイアンテナを使用。